首相撲の崩し方法を中級者向けに解説!力に頼らず相手の体勢を崩す3つの軸

文:NOMI

首相撲の崩し方法を中級者向けに解説!力に頼らず相手の体勢を崩す3つの軸

このページの総論

・首相撲の崩しは腕力ではなく「土台・テコ・重心移動」の3つで決まる

・まず内側を取り、肘をテコにして頭を下げさせるのが入口

・崩したあとの「出口」まで決めておくと、練習の質が一気に上がる

・出場するルールで首相撲の扱いは違うので、事前の確認が必須

まえがき

こんにちは!Kick Timesキュレーターの能見です。

首相撲で組んではいるのに、なぜか崩れない。それどころか、気づくと自分が振り回されてスタミナを持っていかれている。中級者の方から、こういった悩みをよく聞きます。

ここで大事なのは、「もっと力を入れる」ではないということです。首相撲の崩しは、力比べではなく、バランスの奪い合いだからです。

この記事では、首相撲の基本の形を一度整理します。そのうえで、崩しを成功させる3つの軸、タイミング、崩したあとのつなぎ方、練習の進め方をお伝えします。

なお、首相撲とは、相手の首や頭まわりを両手でコントロールして、膝や崩し、投げにつなげるムエタイの技術のことです。

崩せない原因は「腕」ではなく「土台」にあります

崩しがうまくいかないとき、多くの方は腕や首の力でなんとかしようとします。でも原因は、足元にあることがほとんどです。

ジムで指導していると、腕だけで引っ張って、自分の腰が引けている方をよく見かけます。これだと、相手を崩す前に自分の重心が先に浮いてしまいます。

まず確認したいのは、次の4点です。

・足幅は肩幅より少し広く、膝を軽く曲げている

・顎を引いている

・自分の足と相手の足で、四角形を作るような位置関係になっている

・背伸びしすぎず、腰が引けていない

特に足の位置は重要です。自分の足が相手の両足の間に入り込むと、簡単にバランスを崩されて、こかされやすくなります。足は相手の足の「外側」に置くイメージを持ちましょう。

崩しの成功率は、組んだ時点の足の置き方でほぼ決まります。腕の技を磨く前に、まず土台を見直してください。

崩しの基本は「内側を取って、肘をテコにする」

首相撲では、相手の腕より自分の腕が内側に入っているほうが有利です。脇が締まっていないと人は力が出にくいので、相手の腕の内側から首を取りにいくのが基本になります。

組み方の流れは、次のとおりです。

・相手の両腕の間に、自分の腕を滑り込ませる

・前腕の真ん中あたりを相手の肩や鎖骨のあたりに乗せる

・両手のひらを相手の後頭部に当てて、ロックする

・自分の肘を下に落とし、相手の頭を下げさせる

この動きは、テコの原理です。肘が力点、相手の肩や鎖骨が支点、手のひらが作用点になります。首が曲がると、人は首や背中に力を入れにくくなります。だから、腕力で引っ張らなくても相手の姿勢が崩れていきます。

もうひとつ、頭の位置も大事です。自分の頭を相手の正面に置くと、パンチをもらいやすくなります。相手の頭の左右どちらかに寄せて、密着させておくと安全です。

そして、相手も同じように内側を取りにきます。そのときは、肘を締めてブロックします。この「内側の取り合い」が、首相撲の最初の攻防です。

足と重心で「円」を描いて崩す

頭を下げさせたら、次は下半身の出番です。真正面に引くだけだと、相手も踏ん張りやすいんです。そこで、円を描くように動きます。

やり方はシンプルです。首をロックしたまま、片方の足を後ろに引きます。そして、その足の側へ体ごと回転するように動きます。腕で引っ張るのではなく、自分の体の向きを変えることで、相手の重心を引き出します。

相手のディフェンスが固いときは、真っ直ぐではなく「横」に崩すのも有効です。正面の力は強くても、横方向には意外と弱い方が多いからです。

体重の移し方もポイントです。組んだ腕と手のひらの方向に体重を乗せるイメージを持ってください。ただし、かけすぎは禁物です。のめり込むと、相手に逆方向へ流されて自分が崩れます。

腕がパンパンになってしまう方は、腕で崩そうとしている証拠かもしれません。引く、押す、足腰を振るという動きを全部合わせて、体全体で崩しましょう。技術が身につくと、疲れ方がまったく変わってきます。

崩すタイミングは「ふわっ」とした瞬間です

崩しは、力を入れ続けるものではありません。むしろ、相手の動きに合わせて、一瞬だけ力が入る「点」を狙うものです。

組み合っていると、相手が動いた拍子に、体重がふわっと浮くような瞬間があります。この瞬間が崩しどきです。感覚的なので文章では伝えにくいのですが、相手が押してきた力を引き込む、引いてきた力に合わせて回す、といった「相手の力を利用する」場面で現れやすいです。

逆に、相手がガチッと固まっているときに力で動かそうとしても、うまくいきません。そういうときは、いったん自分から小さく左右に振って、相手の動きを引き出しましょう。

崩しは「力で動かす」のではなく「動いた瞬間に乗る」技術です。

練習では、あえて7割くらいの力で組んでみてください。力を抜くと、相手が動く瞬間が見えやすくなります。

組みの練習には、膝用のパッドがあると安全に、そして集中して取り組めます。

崩したあとの「出口」を決めておく

ここが、上位の記事ではあまり語られない部分です。実は、中級者が伸び悩む理由のひとつに「崩したあとに何をするか決めていない」ことがあります。

崩せても、そのまま固まってしまうと、相手に組み直されて終わりです。崩した瞬間に、次の動作に移れるようにしておきましょう。出口の候補は次の3つです。

・膝蹴りにつなげる(引いた足の側から出す形が自然です)

・離れ際にローキックなどを入れて距離を取る

・相手をこかしてポイントや主導権を取る

トレーナーとして、おすすめしたい判断基準があります。それは、「その崩しが自分にとって何のためか」を先に決めることです。

・ムエタイルールで戦うなら、膝や崩しでの優位が目的になります

・ブレイクが早いルールなら、離れ際の一撃につなげる意識が大切です

・ムエタイ以外でも、組まれたときの対処力としての練習も有効です

目的が決まれば、必要な崩しの深さも決まります。全部を完璧にする必要はありません。

もうひとつ、受ける側の練習も大切です。組まれたときに「どこで重心を奪われたか」を体で覚えると、自分の崩しの精度も上がります。崩される経験は、最高の教材です。

練習の進め方と、安全・ルールの注意点

首相撲は、練習量がものを言う技術です。ただ、いきなり全力でやるのは危険です。

おすすめの段階は、次のとおりです。

・まず、手の取り合いだけを練習する(打撃なし)

・次に、足のステップを入れても崩れないようにする

・慣れたら、崩してから膝までつなげる

・最後に、パッドやスパーの中で試す

ロープやコーナーを背にして行うと、動ける範囲が狭くなり、自分の足運びの粗さが見えてきます。相手は、自分より体重のある人を選ぶと、力に頼らない動きを身につけやすいです。

安全面では、首は繊細な部位です。無理に振り回したり、勢いよく引き込んだりするのはやめましょう。練習前に、強さやこかしの有無を相手と共有しておくのが基本です。首や背中に痛みや違和感が続くときは、自己判断せず、専門の医療機関に相談してください。

そして、ルールの確認も忘れずに。日本のキックボクシングでは、団体によって首相撲の扱いが異なります。制限や禁止のところもあれば、認めているところもあります。出場を考えている方は、大会や団体の最新のルールを必ず確認しましょう。

あとがき

首相撲の崩しは、腕力ではなく、土台、テコ、重心移動の組み合わせです。内側を取って肘で頭を下げさせ、足で円を描き、相手が動いた瞬間に乗る。この流れを、ゆっくり丁寧に繰り返してみてください。

そして、崩したあとの「出口」を決めておくこと。これだけでも、練習の手応えは大きく変わります。

首相撲は、一朝一夕では身につきません。でも、コツコツ積み上げた分は、必ず体に残ります。焦らず、安全に、楽しみながら磨いていきましょう。

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Kick Times 編集長。 プロムエタイ選手として日本とタイで試合を重ね、現在は格闘技のトレーナーをしながら業界初の格闘技コンサルタントとして活躍中。 NO KICK NO LIFEやLumpineeBoxingStadium of Japan認定レフリーとしても活躍。 女性の為のキックボクシングプログラム・Beauty Kick Projectディレクター。 特技はWEB制作で、趣味はカフェ巡り。

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