キックボクシングジムの開業前に知るべき5つの壁!お金・物件・集客の現実

文:NOMI

キックボクシングジムの開業前に知るべき5つの壁!お金・物件・集客の現実

このページの総論

・ジム開業に資格は不要。ただし届出・用途・消防・保険の確認は欠かせません

・資金の目安は幅が広いので、固定費から必要な会員数を逆算しましょう

・最大の壁は物件と騒音。内見で実際に音を出して確かめるのが安全です

・「誰のためのジムか」を先に決めると、集客も退会対策もぶれません

まえがき

こんにちは!Kick Timesキュレーターの能見です。

選手やトレーナーとして経験を積むと、「いつか自分のジムを持ちたい」と一度は思いますよね。

ただ、上級者ほど手が止まりやすいものです。教える自信はあっても、経営は別の競技のように感じるからです。

この記事では技術の話ではなく、ジムを続けるための話をします。手続き、資金、物件と防音、損益ライン、コンセプトの順に整理しました。

数字やルールは、公開されている情報で確認できたものだけを載せています。最後の判断は、お近くの専門家や公的機関で最新の内容を確かめてくださいね。

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資格は要らない?開業前に確認したい手続き

ジムを開業するのに特別な資格は必要なく、トレーナーの国家資格もありません。無資格でも、法律上は開けるビジネスです。

個人事業主なら、税務署に「開業届」、都道府県税事務所に「個人事業開業申告書」を提出します。期限は、本来は開業後1か月以内とされています。

見落としやすいのは建物側の手続きです。倉庫や事務所をジムに変える場合は「用途変更」を確認します。建築基準法の特殊建築物には「スポーツの練習場」も含まれます。

確認申請が必要になるのは、変更部分が200㎡を超える場合です。この基準は2019年の法改正で、100㎡超から200㎡超に変わりました。

小さなジムなら申請が不要なこともあります。ただし、手続きが不要でも、基準法などの法律は守らなければいけません。建築士に早めに相談しておくと安心です。

消防や防音のルールも、地域によって規制が異なるため、内装工事の段階から行政機関や専門業者に確認すると安心です。

もう一つ、見落としがちなのが保険です。スポーツ安全保険や施設賠償責任保険への加入は、開業届出とは別の、運営に欠かせないリスク対策とされています。

資格は不要でも、用途・消防・保険の確認だけは省けません。準備期間は、少なくとも3〜6か月程度、物件探しや工事に時間がかかると1年近くかかることもあるとされています。

プロ選手の育成や、興行団体への所属まで考えている方は、条件が団体ごとに違います。契約前に、必ず団体へ直接確認してください。

資金はいくら必要?目安と融資の今

まず、公開されている目安を見てみましょう。賃貸で開業する場合、ある解説では次のように例示されています。

・物件関連費用(前払い賃料・保証金・仲介手数料など):100万〜300万円

・内装工事(防音工事を含む):200万〜400万円

・備品・消耗品(サンドバッグ、ミット、マットなど):100万〜300万円

・その他(運転資金・開業前の人件費など):100万〜300万円

単純に足すと、約500万〜1,300万円です。別の資料では、キックボクシングの開業資金レンジは500万〜2,500万円とされています。

都内で居抜き物件を想定した試算では、想定初期費用の合計は639万5000円でした。

参考までに、全業種の公的調査では、開業費用の平均は975万円、中央値は600万円です。ジム専用の数字ではありませんが、感覚をつかむ材料になります。

幅が大きいのは、家賃と防音工事、設備を新品にするか中古にするかで変わるからです。上の金額は目安にとどめ、必ず自分の見積もりで考えてください。

融資の面では、公庫の創業向け制度が変わっています。新規開業・スタートアップ支援資金の融資限度額は7,200万円です。

制度上の自己資金要件は撤廃されていますが、審査では自己資金の額が判断材料の一つになります。条件は変わることがあるので、申し込む前に公式の案内で最新の内容を確認しましょう。

トレーナー目線でお伝えしたいのは、最初に全部そろえず、運転資金を厚めに残すことです。必要と思ったものを最初に全部準備して、後で不要だったと気づいたという経営者の振り返りもあります。

リングが本当に必要かどうかは、会員の目的しだいです。ミット中心なら、不要なケースも多いはずです。

最初で最大の壁は物件。防音は「契約前」に勝負が決まる

キックボクシングジム経営でいちばん苦労するのは、物件探しだと言われます。サンドバッグを叩く音、ミット打ちの破裂音、縄跳びの振動は、想像以上に周囲に響きます。

そのため、マンションのテナントや上階に住居がある物件では、騒音トラブルで退去を余儀なくされるリスクがあります。地下や1階、独立した建物、繁華街が選ばれやすい理由はここにあります。

防音工事にも限界があります。完璧にしようとすると数百万円かかるとされています。

実際に、大家さんと不動産屋に事前に了解を得ていたのに、階下の飲食店から振動と騒音のクレームが来たという相談も公開されています。

ジムを経営している方の発信では、サンドバッグを建物の躯体に直接固定すると、振動や音が伝わりやすいとも言われています。音は空気だけでなく、床や壁を伝わるためです。

だからこそ、内見の段階で実際に音を出して確かめることをおすすめします。不動産屋には最初から用途を伝え、防音工事業者に同行してもらうのがベストです。

私が指導者の目線で見るなら、次の点を契約前にチェックします。

・上下左右に入っているテナントの業種と営業時間

・サンドバッグの設置方法を、大家さんに書面で承認してもらえるか

・夜間・早朝の営業をしてよいか

・退去時の原状回復の範囲(防音工事分まで戻すのか)

原状回復は、閉めるときに効いてきます。原状回復工事をなるべくしないで済むよう、不動産屋や大家さんに相談することも、出口戦略の一つです。

トレーナー目線の損益ライン。会員数から逆算しよう

ジムの売上は、基本的に「会員数×月会費」です。月会費は、5,000円〜15,000円ほどに設定しているジムが多いとされています。ただ、実際は地域と客層で大きく変わります。

そこで、先に計算してほしいのがこの式です。

・必要な会員数 = 毎月の固定費 ÷ 平均月会費

たとえば、固定費が月50万円(家賃・光熱費・保険・システム・広告など)で、平均月会費が1万円なら、50人です。これは計算のための仮の数字で、実在のジムの数字ではありません。

自分の生活費も固定費に入れて、必要な会員数を出してください。

上級者が陥りやすいのは、「自分が毎日教える」前提で計算してしまうことです。体調不良やケガ、試合の準備で動けない日は必ず来ます。

トレーナーの力に依存した経営だと、人気トレーナーが辞めたときに顧客も離れてしまうという指摘もあります。代わりに立てる人や、クラスの型を先に作っておくと安定します。

もう一つ、見落とされがちなのが退会です。入会を増やすより、辞める人を減らすほうが効くことも少なくありません。

運営者の発信には、退会理由は引っ越しや残業が多く、2〜3週間来なくなった方にメールで連絡するなどの予防策が紹介されています。

ジムで指導していると、通わなくなる直前は表情や出席ペースにサインが出ます。名前を呼んで声をかけるだけでも、続けやすさは変わります。

コンセプトと集客。「誰のためのジムか」を決める

かつてのジムは、プロ選手を育てる道場が主流でした。しかし、プロ志向の人は全体のごく一部です。

ターゲットをそこだけに絞ると、会員数が頭打ちになりやすく、プロ選手の長い練習時間が一般会員の利用を圧迫することもあると言われています。

かといって、フィットネス色を急に強めるのも危険です。ジムを作る前から同じ道場で育ってきた上級者は、物足りなさを感じて離れてしまうことがあります。

指導者としては、クラスや時間帯で分ける方法が現実的だと思います。たとえば、初心者向けクラスと、スパーリングや試合練習の時間を別の枠にします。

「誰のためのジムか」を、一文で言えるかどうか。ここが決まっていれば、料金、内装、広告の言葉まで一貫します。

集客については、開業後は会員からの紹介が重要とされています。紹介してもらうには、技術の説明が丁寧で、通う人が居心地よく感じることが前提です。

上級者の強みは、技術を言葉にして伝えられることです。「なぜこの蹴り方なのか」を初心者にも分かる言葉で説明できると、口コミにつながります。

ジムをトレーニングの場から、仲間と会える場所に変えることが、退会を防ぐ鍵とも言われています。会員同士の交流も、設計に入れてみてください。

あとがき

ジム開業は、資格よりも「準備の質」で結果が変わります。手続き、資金、物件、損益ライン、コンセプトを順番に固めるのが近道です。

特に物件と防音は、契約後にやり直しがききません。内見で音を出して確かめ、出口まで見据えて契約してください。

数字や制度は変わります。融資や届出の最新情報は、必ず公式の窓口や専門家で確認してくださいね。

あなたの経験を必要としている人は、きっとどこかで待っています。焦らず、でも一歩ずつ進めていきましょう。

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Kick Times 編集長。 プロムエタイ選手として日本とタイで試合を重ね、現在は格闘技のトレーナーをしながら業界初の格闘技コンサルタントとして活躍中。 NO KICK NO LIFEやLumpineeBoxingStadium of Japan認定レフリーとしても活躍。 女性の為のキックボクシングプログラム・Beauty Kick Projectディレクター。 特技はWEB制作で、趣味はカフェ巡り。

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