キックボクシングのセコンドの役割とは?試合で差がつく指示と判断

文:NOMI

キックボクシングのセコンドの役割とは?試合で差がつく指示と判断

このページの総論

・上級者のセコンドの役割は、世話よりも「見る・決める・伝える」ことです

・勝負どころは1分間のインターバル。伝えるのは1〜2点に絞ります

・ラウンド中にできることは団体ルールで決まっているので、事前の確認が必須です

・ストップの判断基準は、試合前に選手と共有しておきましょう

まえがき

こんにちは!Kick Timesキュレーターの能見です。

「セコンドについたけれど、インターバルで何を言えばいいか分からなかった」「水とタオルを渡しただけで、役に立てた気がしない」。ある程度キャリアを積んだ方ほど、こんな悩みを持つものです。

準備や持ち物、心構えといった基本は、サイト内の別記事で紹介しています。この記事では一歩進んで、試合中の「頭の仕事」に絞ってお話しします。

インターバルの使い方、ルール上の制限、ストップの判断、試合前の準備。この4つを順番に見ていきましょう。

上級者のセコンドは「見る・決める・伝える」が仕事

試合中の選手は、目の前の相手に集中するのが精一杯です。視野が狭くなり、自分が何を取られているのか、何が効いているのかを客観的に把握しにくくなります。

そこでセコンドの出番です。セコンドは、選手の「外付けの目」だと考えてください。

やることは3つあります。見て、決めて、伝える。この順番です。

見る対象は、たとえば次のようなものです。

・相手の癖(構え、距離の取り方、蹴った後の戻り方)

・自分の選手の消耗(足が止まっていないか、ガードが下がっていないか)

・ラウンドごとの優勢・劣勢の感触

指導していると、選手本人の「効いてるはず」という感覚と、外から見た印象がズレることがよくあります。そのズレを埋めるのが、セコンドの観察です。

1分間のインターバルで何を伝えるか

Krushの公式ルールでは、すべての試合でラウンド間のインターバルは1分間と定められています。団体によって違いはありますが、キックボクシングでは1分が一つの目安です。

この1分には、椅子を入れる、マウスピースを外す、水を飲ませる、汗を拭くといった作業も含まれます。言葉で伝えられる時間は、思った以上に短いのです。

だから、伝える内容は多くても2点に絞ります。息が上がって緊張している選手の頭には、3つ以上は入りません。

私のおすすめは「現状1つ、修正1つ」の型です。たとえば「相手は右を打つとき顎が上がる。そこにカウンターを合わせよう」のように、短く、動作で言い切ります。

「もっと頑張れ」「集中して」では、選手は次に何をすればいいか分かりません。インターバルで渡すのは、情報ではなく「次の1ラウンドの行動」です。

劣勢のときほど、声は落ち着かせてください。セコンドが焦ると、その焦りは選手にそのまま伝わります。

普段の練習から、1分間で指示を出す練習をしておくと本番で慌てません。ミット打ちのラウンド間にタイマーを使って、1分で修正点を伝える練習をしてみてください。

ラウンド中にセコンドができること・できないこと

ここは、団体ごとにルールが違う部分です。例として、K-1とKrushの公式ルールを見てみます。

選手のそばに待機できるのは、チーフコーナーマン1名とセコンド2名の合計3名まで。この3名は事前登録が必要で、試合中の入れ替えもできません。

ラウンド中はリング内に入ってはならず、選手に触れてもいけません。違反すると選手が失格になります。つまり、ラウンド中にできるのは声での指示だけです。

また、コーナーポスト周辺にタオルなどの物を置くことも禁止されています。うっかり置いてしまうミスは、意外と起きやすいので注意しましょう。

「セコンドアウト」のコールがあれば、すぐにリング外へ出なければなりません。椅子や水などの道具の片付けも含めて、動きを事前に決めておくとスムーズです。

セコンドの人数や声出しの扱いも、大会によって変わります。たとえばRISE NOVAのルールでは、2020年8月大会からセコンド数の上限は1名になり、セコンド以外が声を出して指示・応援する行為は禁止とされています。

ルールは改定されることがあります。出場する大会の最新ルールを、必ず自分の目で確認してください。

ストップを決断するという、いちばん重い役割

セコンドの仕事で最も重いのは、試合を止める判断です。選手は「まだやれる」と言うものですから、止める判断は外から見ているセコンドにしかできません。

判断の目安としては、次のような点があります。

・ダメージで足元がふらつき、立て直せていない

・ガードが上がらず、反撃の意思が見えない

・同じパターンで何度も被弾している

これはあくまで一般的な目安です。セコンドは医師ではないので、ダメージが心配なときは、試合後に専門医へ相談するよう選手に勧めてください。

棄権の意思表示の方法も、団体や競技で違います。たとえばプロボクシングでは、JBCがルール改正でタオル投入を廃止し、チーフセコンドがリングエプロンでタオルを回すウェイビングで意思を示す形になりました。

全日本学生キックボクシング連盟の競技規則には、ラウンド進行中にセコンドがタオルを振り回して棄権の意思表示をするという規定があります。

自分の出る大会ではどうするのか、前もって確認しておきましょう。いざというとき、レフェリーに意思が伝わらなければ意味がありません。

勝たせたいからこそ、選手を守る判断ができる。それがセコンドの本当の強さです。

仕事は試合前から始まっている

上級者のセコンドは、試合当日より前から動いています。

まず、ルールの確認です。K-1のルールには、試合前日のルールレビューに、原則として選手とセコンドが必ず参加すると書かれています。大会によっては、こうした場で最終確認をします。

次に、作戦の共有です。「第1ラウンドは距離を測る」「相手が前に出てきたら左ミドルを合わせる」など、試合の流れを選手と言葉にしておきます。

指示を出す人は、チーフ1人に絞るのが基本です。複数人が別々に声をかけると、選手が混乱してしまいます。

最後に、ストップの基準を試合前に話し合います。「この状態になったら止める」と選手が納得していれば、本番で迷いが減ります。

このあたりの話し合いは、選手との信頼関係がものをいいます。日頃のミット持ちやスパーリングで、少しずつ築いていきましょう。

あとがき

上級者のセコンドの役割は、世話をすることから「見る・決める・伝える」ことへと変わっていきます。

1分間のインターバルでは、伝える内容を1〜2点に絞ること。ラウンド中の制限やストップの方法は、大会ごとのルールで確認すること。そして試合前から、選手と作戦と基準を共有しておくこと。

セコンドがいることで、選手は安心してリングに立てます。まずは次の練習から、1分で伝える練習を始めてみてください。

選手と一緒に戦うつもりで、試合に臨んでいきましょう!

The following two tabs change content below.
Kick Times 編集長。 プロムエタイ選手として日本とタイで試合を重ね、現在は格闘技のトレーナーをしながら業界初の格闘技コンサルタントとして活躍中。 NO KICK NO LIFEやLumpineeBoxingStadium of Japan認定レフリーとしても活躍。 女性の為のキックボクシングプログラム・Beauty Kick Projectディレクター。 特技はWEB制作で、趣味はカフェ巡り。

「試合」の関連記事

コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。 ※ が付いている欄は必須項目です

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)