目次
このページの総論
・パーソナルトレーナーは、技を教えるだけでなく「相手の目的に合わせて設計する」仕事です
・働き方は、ジムの社員・業務委託・独立の3パターンが代表的です
・国家資格はなく無資格でも働けますが、安全に教える学びは欠かせません
・上級者ほど「強い」と「教えられる」の違いを意識すると伸びます
まえがき
こんにちは!Kick Timesキュレーターの能見です。
長く競技を続けてきて、「この経験を仕事にできないだろうか」と考える方は多いと思います。一方で、「試合で強いことと、人に教えて仕事にすることは別なのでは」と不安になりますよね。
私は東京・麹町でパーソナル専門のスタジオを運営しています。初心者や女性からプロ志望の方まで教えてきた立場から、この仕事の中身を整理してみます。
セコンド(試合中にコーナーで選手を支える役目)のお話は別の記事にあります。この記事では「日々のレッスンを仕事にする」という視点に絞ります。
パーソナルトレーナーの仕事は「ミットを持つ」だけではない
キックボクシングのパーソナルトレーナーと聞くと、ミットを持って「ハイ、ワンツー!」と声をかける姿を思い浮かべる方が多いはずです。もちろんそれは中心的な仕事ですが、実際はもっと幅広いものです。
レッスンの前後を含めると、おおむね次のような業務があります。
・初回のカウンセリング(目的・経験・体調・生活リズムの聞き取り)
・目標に合わせたメニューの設計
・フォームの確認と修正、ミット・マスの進行
・当日の体調や痛みの有無の確認
・レッスンの記録と次回への引き継ぎ
・予約管理、連絡対応、場所によっては集客や経理
上級者の方が見落としやすいのが、お客様の多くは「強くなりたい」より先に「続けたい」「変わりたい」と思っているという点です。ダイエット、運動不足の解消、ストレス発散、試合に出たいなど、目的はさまざまです。
目的が違えば、同じミット打ちでも組み立てはまったく変わります。ここを設計する力が、パーソナルの価値になります。
働き方は大きく3つ。自分に合うのはどれ?
キックボクシングの指導者の働き方は、フィットネスジムで正社員として働く、複数のジムで業務委託契約を結ぶ、独立して自分のジムを経営するの3つに分けて紹介されることが多いようです。
それぞれの特徴を、指導者の一般的な視点で見てみましょう。
・ジムの社員:研修や会員の流れが整っていて、指導に集中しやすい反面、メニューや指導方針に会社の型があります
・業務委託:複数の場所で経験を積め、自分の枠で動ける反面、収入や予約は自分で安定させる意識が必要です
・独立:やり方を自分で決められる反面、集客などのマーケティングも自分で行う必要があるとされています
上級者の方がつまずきやすいのは、独立のイメージです。「教えるのが上手なら人は来る」とは限りません。独立すると、指導の時間より「知ってもらう・信頼してもらう」時間が増えます。
まずは社員や業務委託で現場を経験し、お客様の層や求められるものを肌で知ってから決めても、遅くはありません。
資格は必要?「なくても働ける」の本当の意味
結論から言うと、パーソナルトレーナーに国家資格はなく、資格がないと働けないわけではありません。独立する場合も、特別な資格は必要ないとされています。
キックボクシングのトレーナー求人でも、資格不問や未経験歓迎をうたうものが見られます。経験や人柄を重視する現場が多いのでしょう。
キックボクシングに特化した認定資格はかなり限られていて、KICK FITという認定資格を挙げる解説もあります。ほかに、運動指導全般の民間資格を取る方もいます。
ただし、資格がいらないことと、学ばなくていいことは別の話です。体力や既往歴(過去の病気やケガ)には個人差があり、負荷設定や動きの修正を誤るとケガにつながることがあるからです。
資格は「あると有利なもの」ではなく、「安全に教えるために何を学んだかを示す手段」と考えると、選びやすくなります。解剖学や栄養の基礎など、競技経験だけでは補いにくい部分を埋める目的で選ぶのがおすすめです。
上級者が一番とまどう「できる」と「教える」の壁
上級者の方ほど、体が勝手に動くので、動きを言葉にするのが難しくなります。これは多くの指導者が通る道です。
私はサウスポーで左ミドルが得意ですが、オーソドックス(右構え)のお客様に教えるときは、頭の中で左右を反転させて伝えます。自分の感覚のままだと、相手には「何を言っているのか分からない」となってしまうからです。
教える力を磨くうえで、次の点を意識してみてください。
・同じ動きを3通りの言葉で説明できるようにする(言い換えの引き出し)
・できない原因を「柔軟性」「バランス」「理解」「体力」に分けて考える
・一度に直すのは1か所にしぼる
・お客様のレベルに合わせて、ミットの強さや間合いを調整する
特に初心者への指導では、自分が受けて気持ちいいミットより、お客様が打ちやすいミットを持つことが大切です。気持ちよく打てると、お客様は続けやすくなります。
また、相手を倒す技術と、相手を安全に動かす技術は別物です。ここを切り替えられると、指導の幅が広がります。
長く続けるための準備:自分の体と学びを守る
レッスンの数が増えると、トレーナー自身の体への負担も増えます。ミットを受け続ける肩・手首・肘、立ちっぱなしの腰や足などです。
指導用のミットは、手首への当たりや持ちやすさが製品によって違います。自分の手に合うものを選ぶことも、長く続ける工夫のひとつです。
痛みや違和感が続くときは、無理をせず整形外科などの専門医に相談してください。トレーナーの体調はレッスンの質に直結します。
あわせて、自分のトレーニングも続けましょう。教える側になると自分の練習が後回しになりがちですが、自分が動けることは、説得力と安全の両方につながります。
学びの面では、次のような習慣がおすすめです。
・他のトレーナーのレッスンを受けて、声かけや進め方を観察する
・お客様の変化や反応を記録して、メニューを見直す
・競技以外の運動指導や栄養の基礎を、少しずつ学ぶ
焦らず続けた人が、結果として信頼されるトレーナーになっていきます。
あとがき
キックボクシングのパーソナルトレーナーは、競技経験を活かせる一方で、「教える力」「設計する力」「続けてもらう力」が求められる仕事です。
働き方には社員・業務委託・独立があり、国家資格はありませんが、安全に教えるための学びは欠かせません。
上級者のあなたが積み上げてきた経験は、きっと誰かの「やってみたい」を支える力になります。まずは身近な一人に、分かりやすく教えるところから始めてみませんか?
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