目次
このページの総論
・まず「どの方向の可動域が足りないか」を見極めると、ストレッチの無駄が減ります
・練習前は動的ストレッチ、練習後にじっくり伸ばす静的ストレッチが基本です
・蹴り足だけでなく軸足側の股関節、そして脚を上げ続ける筋力も大切です
・痛みが続くときは我慢せず、専門医に相談しましょう
まえがき
こんにちは!Kick Timesキュレーターの能見です。
「毎日ストレッチをしているのに、蹴りの高さが変わらない」「ミドルは蹴れるけれど、ハイになると上体が傾いてしまう」。中級者になると、こんな悩みが増えてきます。
基礎は身についている。それでも、あと一歩が届かない。もどかしいですよね。
この記事では、ストレッチのやり方の紹介にとどまらず、「自分の股関節はどこが足りないのか」を見極める考え方を中心にお話しします。
練習前後の使い分け、軸足側のケア、痛みが出たときの考え方もまとめました。最後までお付き合いください。
まず「どの方向が硬いのか」を見極めよう
「股関節が硬い」と一言でいっても、実は動かす方向がいくつかあります。ここを曖昧にしたままだと、頑張っているのに効果が出にくくなります。
指導していると、開脚ばかり熱心にやっているのに、実は脚を前に振り上げる動きが詰まっている方によく出会います。
大きく分けると、チェックしたい方向は次の3つです。
・横に開く動き(内ももの内転筋まわり)
・前に上げる動き(太もも前の付け根にある腸腰筋や、太もも裏のハムストリングス)
・外にひねる動き(お尻の深い部分の外旋筋まわり)
簡単なセルフチェックをご紹介します。壁に手をついて、上体を起こしたまま蹴りの軌道で脚を上げてみてください。
上体を倒さずに、狙いたい高さまで脚が上がるかどうかが、実戦で使える柔軟性の目安です。
ちなみに、上体を倒せば股関節が硬くても足先は高い位置に届く、という指摘もあります。身体の使い方が上手なら、上半身を倒すことで可動域内でも顔の高さまで届かせられるという考え方です。
ただ、それは「届く」だけです。軸がぶれにくく、安定して出せる蹴りを目指すなら、可動域そのものを広げる意味があります。
次に、上げた脚の形を観察しましょう。膝が外に流れる、骨盤が後ろに逃げる、腰が反る。どこで止まるかによって、足りない方向が分かります。
可能なら、スマホで横と正面から撮ってみてください。自分では気づかない詰まりが見えてきます。
柔らかさだけでなく「脚を上げる力」も必要
柔軟性を追いかけていると、つい忘れがちなことがあります。それは、柔らかければ蹴れるわけではないという点です。
自分の力で脚を上げて、その高さで保てるか。この力が足りないと、せっかくの可動域を蹴りに使えません。
開脚で床にぺたっとつく人でも、立った状態では脚が上がらないことがあります。人に押してもらった可動域と、自力で出せる可動域は別物なのです。
逆に、柔らかすぎるデメリットを指摘する声もあります。筋肉や関節が過度に柔らかいと力が分散し、パンチやキックの衝撃力が弱くなりやすいという見方です。
もちろん個人差はありますが、トレーナーとしても「柔軟性は多ければ多いほど良い」とは考えていません。必要な分を確保して、残りは筋力と技術に回すほうが効率的です。
筋力面では、スクワットやランジなど、お尻と太ももを使う基本種目が土台になります。太ももの筋力がついていると高く蹴り上げやすいとも言われています。
そこで、おすすめなのが「保持の練習」です。壁に手をついて、ゆっくり蹴りの高さまで脚を上げ、その位置で数秒止めます。反動を使わずに上げて止める。これだけでも、使える可動域が変わってきます。
ストレッチで広げた可動域を、自分の筋力で使えるようにして初めて、蹴りの高さに変わります。
練習前は動的、練習後は静的が基本
ストレッチには、体を動かしながら行う動的ストレッチと、同じ姿勢で止めて伸ばす静的ストレッチがあります。どちらが良いというより、使うタイミングが違います。
一般的に動的ストレッチは運動前、静的ストレッチは運動後や就寝前に行うのが良いとされています。
練習前に長く静的ストレッチをすると、パワーが出にくくなる可能性も指摘されています。ウォームアップ前の長時間の静的ストレッチは、パフォーマンスを下げる可能性があるとされています。
だから、練習前は次のような動的ストレッチで体を温めましょう。
・壁に手をついて、脚を前後にスイング
・同じく横方向にスイング
・股関節から大きな円を描くように脚を回す
コツは、最初から大きく振らないことです。小さく、リズムよく始めて、少しずつ振り幅を広げます。
一方、練習後は筋肉が温まっているので、静的ストレッチの時間です。ある資料では、反動を使わず30〜45秒程度保持することで柔軟性向上が期待できるとされています。
痛気持ちいい手前で止めて、呼吸を止めないこと。ここは守ってください。
中級者向け・股関節ストレッチ4選
ここからは、練習後に取り入れたい静的ストレッチです。先ほどのチェックで見つけた「足りない方向」に合わせて選んでください。
・バタフライ(足裏を合わせて座り、膝を外へ開く):内ももに効きます
・フロッグ(四つん這いで膝を左右に開く):開く動きの深い部分に効きます
・ハーフピジョン(片膝を曲げて前に置き、後ろ脚を伸ばす):お尻の外旋筋に効きます
・腸腰筋ランジ(片膝をついて骨盤を前に出す):脚を前に上げる動きに関わる付け根を伸ばします
バタフライは内転筋群、ハーフピジョンは外旋筋群、フロッグは内転筋と股関節を伸ばすといった整理は、選ぶ際の参考になります。
注意したいのは、背中を丸めて「前に倒れた気分」になることです。股関節ではなく腰が曲がっているだけ、ということがよくあります。背すじを伸ばして、骨盤から倒すイメージで行いましょう。
床に手が届かずフォームが崩れるときは、ブロックなどで支えると姿勢を保てます。
頻度は、毎日少しずつが理想です。ただ、練習と休養のバランスがあるので、体の反応を見ながら調整してください。
練習前は動かす、練習後は止めて伸ばす。この使い分けを守るだけで、同じ時間でも質が変わります。
軸足側と左右差を見直そう
蹴りの高さに悩むと、蹴り足ばかり気になりますよね。でも、実は軸足側の股関節もとても重要です。
蹴る瞬間、軸足は回転の支点になります。ここが硬いと、腰が回りきらず、脚を上げるために上体や膝で代償してしまいます。
蹴り足側だけでなく軸足側の股関節も柔らかくすることで、より深い腰の回転が可能になるという指摘もあります。
左右差にも注目してください。サウスポーで左ミドルが得意な私自身もそうですが、得意側ばかり蹴っていると、反対側とはっきり差が出ます。
指導していると、利き側ばかり練習する方は多いです。その結果、苦手側のストレッチも後回しになりがちです。
左右差がある場合は、硬いほうを先に、余裕があればもう一セット行う、という調整が有効です。
もうひとつ、蹴り方のクセにも触れておきます。高く蹴ろうとして、脚を横から回すように振り上げていませんか。
Kick Timesの過去記事でも触れていますが、足を回旋させると股関節を痛めたり、足に力が入ってしまい綺麗なキックが蹴りにくくなることがあります。力を抜いて、真下から真上に持ち上げる感覚を大切にしてください。
痛みが出たときの考え方
最後に、とても大事な話をします。
ストレッチ中の「伸びている感じ」と、関節の奥や付け根が「つまる」「刺さる」感じは、別物です。後者が出たら、いったん止めてください。
次のような場合は、無理に続けず、整形外科などの専門医に相談しましょう。
・歩くときや日常動作でも痛い
・何日たっても痛みが引かない
・片側だけ、動かすと引っかかる感じが続く
・夜になってもズキズキする
股関節の痛みの背景には、繰り返しの動作による負荷、筋力不足、柔軟性の欠如など、複数の要因が挙げられています。自己判断で「柔軟性不足だ」と決めつけないでください。
Q&Aサイトでも、痛みを抱えたまま練習を続けている声を見かけます。でも、慢性化させたくないなら、早めに診てもらうほうが安心です。
痛みがあるときは、蹴りの本数を減らす、高さを下げる、その日は休むなど、練習内容を調整する勇気も必要です。
あとがき
今回は、中級者の股関節の柔軟性について、見極め方から練習法までお話ししました。
まず、どの方向が足りないのかを調べること。次に、動的と静的を使い分けること。さらに、軸足側と左右差、そして自力で脚を上げる力も見直すこと。
そして、痛みがあるときは専門医に相談することを忘れないでください。
柔軟性は、焦らず積み重ねるほど、確実に変わっていきます。今日の練習後の数分から、ぜひ始めてみてください!
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